・TSの世界

 21世紀史概略


 1:地下都市時代黎明期

 21世紀になっても、加速度的に進むオゾンホールの拡大を止めることはできませんでした。

2025年に開かれた国連常任理事会で地下都市開発計画が全会一致で議決され、これによって、地上に降り注ぐ紫外線から人々が生き残る手段を人類は手にしました。

 2030年を境に世界各地で地下都市の建設が始まり、作業用機械から発展した人型のロボットであるアドヴァンスド・スレイヴ(AS)の登場によって作業が進み、2040年には世界初の地下都市UGニューヨークを始めとする10箇所の地下都市が完成しましたが、この頃には世界の荒廃の病巣が着実に地球をむしばみ、南極大陸の20%が氷解していました。水位の上昇はこの時点から既に始まっており、それによって地下都市建設のグローバル化は急務となりました。


 2:世界の崩壊

 2045年、後にビッグバン事件と呼ばれる大災厄が世界を襲います。月面移民の中継点として栄えていた都市規模の宇宙ステーションのひとつであるシルクロードIIがテロによって地球、南極大陸の核ミサイル貯蔵施設へと落下するという大事件が起こりました。

 これによって南極大陸の全てが氷解、世界中の水位が急激に上昇して大災害を引き起こしました。核ミサイル施設の爆砕と共に北半球の北1/3が放射能汚染にみまわれ、それに伴って北半球の各大陸に放射能の雨がりました。運良く生き残った人々や、既に地下都市で生活を始めていた人々は、なんとか生きながらえることができたかに思えました。

 しかし、海洋汚染によって水産物の収穫量は激減し、放射能の雨によって地上の農耕畜産業の業界は壊滅的なダメージを被ったため、以後は世界的な食糧難が人類を襲います。それによって、この頃の世界の人口は2億人程度にまで減少しましたが、月面移民者や宇宙生活者によって運営されている企業の大規模な出資によって食糧援助を受けたことで、その食糧難はとりあえずの解決をみました。


 3:都市国家の台頭

 2060年代に入って、人々の生活はようやく安定期に入ります。宇宙からの支援がなくとも各地下都市で自給自足が可能となり、ビッグバン事件以後に停滞していた地下都市建設も再開されるようになりました。

 人々の生活は確かにある程度安定してきたのですが、ビッグバン事件以後、世界各地に存在していた国家は国家レベルでの組織維持ができなくなっており、それぞれの都市が自治を行っている状態が10年ほど続きます。

 2076年に起こったカリフォルニア独立戦争を契機に各都市が自治都市国家宣言を掲げるようになり、これまで形式だけ存在していた国家という体裁が、この時点で崩れ去りました。各地で独立戦争が起こっただけでなく、今までは生きるのにやっとであったためになりを潜めていた民族紛争が頻発し、世界は都市国家時代へと逆行することになります。


 4:冒険者達

 激化した各地の紛争の規模が全体的に縮小されたのは、2080年代に入ってからです。その頃から戦争が多発した時代に大量に雇われた傭兵達や召集された軍人は、徐々に職にあぶれ始めます。しかし、彼らは持ち前の特技を生かして、人々や企業が抱えたトラブルを解決する事で糧を得る、半ばアウトローのような存在になりました。次第に彼らはTSU(Trouble Shooting Unit)と呼ばれるようになり、警察やその他の都市国家がとりあげてくれないようなトラブルを解決し、活躍するようになりました。

 2080年代以後はいわゆる冒険者の時代と呼ばれ、今日まで続いています。