第一部あとがき
〜TRPGでこんな事をして良いのか?〜


 「機動戦士ガンダム0088〜二律背反〜」が連載開始されて、はや一年と少し・・・ようやく第一部を完結させることができました。この作品は1996年にテーブルトークRPGを通じて、筆者である私自身がルールの作成、シナリオ作成、GM、ショールを始めとするNPCのプレイを行って、他3人(ファクター、レイ、ナリア)のプレイヤーが物語の中に溶け込んでくれた事で完成したモノです。プロットは95年に事故で入院している間に、あまりにヒマを持て余して考えました(笑)
 1996年の時点では筆者自身でもガンダムの知識はそれほど大したモノではなく、設定面で矛盾した点や、オフィシャル設定に記述があったにもかかわらず勝手に作ってしまった設定などが多々見られるかと思います。その辺は多めに見て下さいますよう、お願いしたいモノです。言い訳はしたくないので、
「もうTRPGでやっちゃったことで、もし矛盾があっても変更できない部分がある。変更したらストーリーが崩壊しかねない。」
 とだけ、言わせていただきます(笑)

 さてこの作品・・・はじめは「想いは夢幻の彼方に」(KAIEIさんサンクス)というタイトルがありましたが、後半を過ぎてそれをなくしました。その理由は、テーマ、ストーリーの一貫性はあるものの、作品の性質が微妙に異なるからです。だから、第三部まで既にタイトルが決まっています。登場人物を一通り出してしまうことが目的であった第一部「二律背反」、TRPGでもっとも盛り上がった第二部「先にあるもの」、そしてTRPGではやっていないものの、作品の完結部分としてプロットを用意してあった第三部「ジハド」・・・第一部も第二部も第三部も、一応は独立した作品としてお楽しみ頂けるようにするつもりです。でも、一応最初から読んで下さいね(爆)
 第一部では主人公であるショール・ハーバインとその周辺の人間関係を形成していくことが、第一部の目的でした。これは完結までの間に終わってしまったので、目的は達成できたと思います。第二部ではこれ以上人間関係がややこしくなることは、余りないと思います。第二部は私が用意した目玉シナリオだったので、プレイヤー達や環境整備に前置きが欲しかった、それが第一部のコンセプトです。それでも一部のファンの方から良い反響を頂けたのは、筆者として、そしてシナリオを考えた人間として心から嬉しく思います。
 しかし、TRPGのプレイスタイルをこの小説のままにしても良かったのか?という事は、作品の善し悪しとはまた別の次元に存在します。なぜなら、TRPGはプレイヤー達が主人公であるべきだからです。この作品の主人公はショール、つまりNPCでした。ストーリーの構成上やむを得ないのですが、やはりもっとプレイしていたシーンを作中に挿入すべきだったと少し反省しています。そう、この作品は未完成なんです。でも、これの完全版を数年後に執筆したとしたら、分量はおそらく今の2倍以上に膨れ上がることは確実でしょう。今でさえ短いとは言い難い作品であるのに、です。実はこの完全版執筆は最初から予定していることなんです。半分ほど割愛するであろう事は、最初から予想できましたしね。この完全版は、私が同人誌進出の際に、最初の出版物とさせて頂くつもりです。2005〜2010年くらいにコミケで「0088」を見かけたら、買ってやってください(爆)
 話が逸れました、TRPGの話でしたね。ファクター役の友人は、主役になるのは嫌だと言いました(笑)これは主役が面倒だからとか、そう言う不合理な理由からではないそうです。確かにプレイヤーは主人公ですが、作品が複数の視点から描かれたものであれば、描写や場面、視点の転換が大変難しくなり、作品としての完成度を下げるリスクがあることを恐れていたが故のことであったそうです。それに関しては私も全くの同感だったので、彼の主張に理解を示し、能動的な行動を行って貰いながらも主役級キャラではなく、脇役に誓いキャラを敢えて演じて貰うことで時代とストーリーに溶け込んで貰うことにしました。ファクター役プレイヤーは私と同じくらいのプレイ歴をもっており、その辺に関しては柔軟な考えを持っていました。まぁ30歳過ぎた主人公なんて嫌だというのが本音のひとつであったかも知れませんけど(爆)
 とにかく、ファクターは目立たなかったかも知れないけど、実はもの凄く渋いところで良いプレイをしています。非戦闘場面ではできるだけみんなをまとめることに集中し、戦闘時には戦術指揮官として優秀であることを証明してくれました。彼の指揮がなかったら、クレイモア隊の任務成功率はもっともっと低くなっていたかも知れません。GMとして見事と言わせていただきます。
 レイ役のプレイヤーは、戦闘よりも非戦闘時のロールプレイで頑張ってくれました。声優さんの山崎たくみさんのしゃべり方を意識していて、もの凄く楽しそうにプレイしていました。ジョン・マツダの設定は彼が作ったんですよ。それに便乗してマコト・ハヤサカなんていう悪のりしたキャラまで登場させてしまいました(笑)
 ナリア役の女の子はTRPG初体験で、あまりロールプレイに徹すると言うことに慣れていなかった部分があり、出番が少なかったことはいささか残念ではありました。それでも初めてなりにかなり健闘していたと思います。レイとのカップリングができてしまうとは・・・こりゃお兄さん一本取られました(爆)

 「ガンダム0088」の作品は第一部〜第三部の本編だけではなく、他のサイトさんへも送らせていただいた番外編も存在します。これはサイドストーリーとしての性質を持つ本編の、更にサイドストーリーを作ってしまおうという試みがあってのことです。無論完全版にはこれらをできるだけ含ませようと思います。番外編は現在ショールとエネスの初陣の物語を掲載しています。他にレイのアナハイム時代、ショールとエリナアの士官学校時代、ファクターやナリアの過去、そしてマチス・アルツールやクリック・クラック、イーリス・リィプス、ロフト・クローネやフェリス・ウォルシュなどメインキャラのほとんどにそれぞれ焦点を当てた作品を発表したいと思います。完全版はこれら番外編もすべて巻末に収録するつもりなので、完全版の完成は少なくとも5年はかかると思っています。結構遠大でしょ?(笑)

 少しだけ間を取って、出来るだけ早く第二部をスタートできるようにしますので、これからも「0088」を宜しくお願いします。一番最初に感想をくれた倉取讃岐さん、参考にして下さったミケさん、他にもいくら感謝してもしきれない人が沢山おられます。みなさん、ありがとうございました、そしてこれからも宜しく。


2001年2月1日
早川 愁

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